住宅の断熱性とデザイン

  • 2023年8月6日

ここでは住宅の断熱性能とデザインや空間について、ここ数年、一般的に求められている基準、弊社での多く採用している断熱仕様と比較しながら少し整理してみたいと思います。
また、様々な住宅の空間、場所、場、シーンを支えるための設備や性能をデザインすることが大切だと思っているので、その点も踏まえて弊社のスタンスとして考えてみたいと思います。

断熱基準

住宅の断熱について、どんな断熱材を入れると、どの程度のレベルの断熱性能ですよ。。という断熱の基準が品確法や省エネ法で分類されています。ここではその詳細については省かしていただいて、最近の断熱の目安となる基準、、断熱等級4をベンチマークとしてお話ししたいと思います。

断熱等級4とは
現在、省エネ法において、建物の断熱性能の分類として断熱等級というものが決められています。
等級は等級2から等級7まであり、床、壁、天井、開口部ごとの断熱性能を面積と合わせてチェックし、トータルで評価するというものです。以下のUA値、ηAC値がその等級を判断するものです。
屋外にどのくらい熱が移動するかを表す指標 UA値(主に冬)
日射がどの位入ってくるかを表した指標  ηAC値(主に夏)
(わかりやすく説明されているサイト https://www.afgc.co.jp/knowledge/2017/05/17/50)
また、その住宅が建築される地域によっても分類がされていて、関西地域は6地域です。

この6地域の等級4の数値はどうかというと UA値が0.87以下 ηAC値が2.8以下です。
この数値を見たところでというのはあると思います。知りたいのは、これはどの程度の性能なのかを感覚的に理解できるのが一番よいのかなと思うのですが、なかなか難しい。
一般的には壁にグラスウール断熱材を100mm、天井に165mm、床にも100mm入れた程度を入れ、窓の開口部を熱線を反射するペアガラス(複層ガラス)が入った樹脂アルミの複合サッシを使用した住宅となります。(もっといろいろと細かいことがあるので大枠はこんな感じです)
これは、温暖化対策、省エネ化の国の施策とリンクして、新しく建てる家はこの等級4レベルの性能を有していれば、税制優遇があったり、フラット35の金利優遇があったり、エコポイントという金券が配られたりと、少しづつ、基準を変えながら今に至っています。また、2年前に300㎡以上の住宅は、この基準を満たすことが、義務化され、それ以下の面積の住宅も、それに向けて努力することが求められるようになりました。
弊社が何件もこの等級4レベルの住宅を設計して感じるのは、一般的な木造住宅の場合、冷暖房設備を利用しながらストレスなく空調できるといった感じでしょうか。きわめて高いレベルではないので、真冬の外気温が1桁台の時や、猛暑日が続く夏場はエアコン等に頼らざるおえないが、少し和らいだ時期では、その性能を生かせるので、そこまで設備に頼らなくても生活できるといイメージが概ね合っているように思います。

弊社の断熱性能確保の取り組み

弊社ではこの等級4を基準として、設計はスタートしています。実のところ、使用する断熱材や建築の形態や納まりによって、施工の手間や難易度、コストが変わるので、実は現場をいかに考えるかが、設計よりも重要です。断熱の精度を上げるには大工工事、電気工事、水道工事、外壁工事など、各業者さんの力によるのですが、まだまだ、現場職人レベルでは、意識の差があり、その点を監理することが大切です。
以上のことからも、できるだけ現場精度を上げるために、予算的に可能であれば、断熱工事を専門とする業者に施工を依頼しています。

断熱性向上とデザインとの関係

先程の等級4において、さらに上位の断熱性を確保するには、開口部の性能の向上が重要になってきます。しかし、一方、デザインやコストに大きく関係してきます。性能の高いサッシは高価であるのと同時に、サイズも大きくしにくく、また、開閉方法にバリエーションが限られたり、少しデザイン的にも、野暮ったくなったりと、全体をまとめていく上で、試行錯誤が必要です。性能は数値化した表現が可能となったことにより、それを追い求めすぎたことにより、そこにばかり、お金を使い、窓も小さく、外部との関係性も希薄となった、面白みのない住宅なってしまっている事例が昨今、巷では多く見受けられます。
時として、大きな開口部が解放感を生み、緑を取り込み、その住まいを豊かにしたり、時として、トップライトからこぼれる光に癒されたり、時には、大きく開かれた窓から、さわやかな風が入ってきたり、そういったことと折り合いおつけて、デザインしていくことが大切です。暑い夏に海に行ったり、山に行ったり、寒い冬にでもキャンプをしたり、人間、元来、自然とのかかわりを持っていることが、居心地がよかったりするわけで、もちろん、寒いのも暑いのも私も嫌ですが、それでも、極端になりすぎないように、人間の五感を大切に住まいをデザインすることが大切なのだと思います。

今後はどうなっていく??今後はどうす??

今後、断熱等級4をベースとして、6等級に近い形で、性能アップした住宅がどんどん増えてくるのではないかと思います。この6等級というのは、全館空調に対応できる性能で、部屋の間取りや、空気の流れを上手に考えると、エアコン1台でまかなえるレベルの性能です。また、デザインの自由度の上がったサッシも発売されてくると思います。弊社でも、その辺りを意識しながら、デザインとの両立を図りつつ、費用はますます掛かる方向になっていくので、コストコントロールを上手にして、本当に大切なことを吟味し、性能を6等級に近づけつつ、心地いい場所づくりを進めていきたいと思ってます。