萱葺きのお寺

  • 2005年8月6日

最近、お寺の客殿の建替えの提案をする機会があった。客殿といっても古くからある地域の小さなお寺なので、檀家さんから言わすと集会所だそうだ。昔から地域と密接に関係していて、節目節目での行事や、法事などでみんなで利用している。その地域の檀家さんの寄付というか出資で建てられているからだろう。
今回、写真の萱葺き(上には鉄板で覆われてます)の庫裏兼客殿を解体して庫裏は別で新築したため、客殿だけを建てるというものだ。このむしろ萱葺きの民家といった感じの客殿は正確にはわからないそうだが、築150以上の江戸末期から明治初期に建てられたもので、かなり老朽化しているが、佇まいはRC造の本堂よりもはるかに立派だった。現地に初めて行ったときから、これを壊さないで使えないものかと思っているのだが、傾いているのを戻して、ジャッキアップしてコンクリートの基礎を打ち、構造補強をして、全面改修するととても予算的には難しそうだ。そもそも工務店経由で話が来て、計画とそれに見積をつけて提案するもので、実施図面もないうちから、改修などという空けてみないとわからない不確定な要素がたくさんあるもので、工務店側もとてもそんなことはできそうにない感じだった。私の方としてもほとんどヒアリングができなかったことや、檀家さんからは建替えの提案を求められていたことや、他にも7~8社の提案があることもあり、あまり本線より外すのは得策ではなさそうなので(色気を出してしまって)中途半端な建替え案を出してしまった。
が、やはり壊してしまうことは簡単なことなので、何とか利用していく方法を提案すべきではなかったのかと今更ながら思ってしまう。この建築自身、集会所という機能であれば構造上の問題を除けば充分に満たすだけのポテンシャルは備わっているし、それほど歴史的価値などはないにしろ、そのシンボリックな堂々としたフォルムは到底いまの採算優先の考えでは建てることはできないだろうし、RCの本堂や最近新築した庫裏を見ていると(あまりよくないのであえて写真は載せてません。)せめてこれだけでもこの場所に残ってもらいたいと思ってしまう。
私のところに仕事の話が来なくとも、少ないコストでお寺風のコラージュをしたものだけは建たないでもらいたいと願うばかり。